訃報:奈良毅理事が逝去されました。

 私たちのガルーダ学会理事奈良毅先生が肺線がんのため、去る1月20日、享年81歳でお亡くなりになられました。誠に痛恨の情に耐えません。
 
 先生は、生前「私は、ヴィシュヌ神の成リ変わりだ」とおっしゃっていられました。ご承知の通りヒンズー教でガルーダはヴィシュヌ神のvehicleですから、ガルーダは先生の乗り物であったわけです。先生は、たいへん宗教的な方であり、輪廻転生を深く信じていられました。
 
 3月29日東京神田の学士会館で「お別れの会」が開かれました。その席上で、先生が生前に残された「お別れの言葉」が日本語と英語で披露されました。「お別れの言葉」の中で先生は、「若い頃、カルカッタ大学でベンガル語を研究していた時に、私は、インド人に生まれていたらどんなに良かっただろうかといつも思っていました。自分は生前インド人であった。しかし、今生、日本人と生まれてきた以上は、どうしようもなく、日本とインドの架け橋になりたい」とおっしゃられました。

 また、「仏教、神道、ヒンズー教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教それぞれの宗教の仕方によって、お別れの詞を頂きたい」とおっしゃいました。会場の片隅に、白い花に囲まれた先生の遺影が架かっている祭壇がひっそりと佇んでいました。会場に埋め尽くされた参列者は一人ひとり花を捧げて先生にお別れいたしました。

 先生はまた「みなさまには、彼岸あるいは、生まれ変わったこの世で、再びお会いできることでしょう」とおっしゃいました。そして、お食事が供されました。このお食事は、先生が会葬者全員に振る舞われた最後の晩餐だったのです。

 「お別れの会」は、在日インド大使館、バングラデシュ大使館、カルカッタ大学、その他世界中多くの場所で開催されました。先生は国際ベンガル語学会会長、東京外国語大学名誉教授などを通じて多くの業績を残された言語学者としてだけではなく、祈りによる広島平和市民運動代表などで世界平和と少数民族の言語文化や地球環境保全のために尽くす社会運動家でもありました。

 私たちガルーダ学会は、ヴィシュヌ神を失ったガルーダのように一瞬目の前が真っ暗になりましたが、神はこの目では見えなくても心の目では見えていることを悟り、気を取り直しました。そして、なお遥か遠くまでガルーダの追跡を続けなくてはならないと固く覚悟をいたしております。